デフレが蝕む

日本経済新聞 2003年6月20日 特集

輸出増で投資喚起
円、150〜160円に誘導

重原久美春インタビュー記事

日本経済がデフレから脱却できない背景には、行き過ぎた円高で輸出が伸びず、国内の生産や雇用を圧迫したこともある。政府が円高を是正することで輸出を拡大させ、国内の設備投資を喚起する必要がある。そうすれば輸入物価上昇の効果も見込める。

経済協力開発機構(OECD)の国際統計によると、世界輸出に占める日本製品の比率は下がり続けている。景気低迷にもかかわらず円高が是正されず、輸出競争力が弱められたことが原因だ。

現状を打開するには、円相場に目標圏を設定して市場に公表するのが近道だ。具体的には、デフレが解消するまでの時限措置として、政府・日銀による無制限の円売り・ドル買いの市場介入を実施し、円相場を1ドル=150〜160円に誘導するのが望ましい。

この水準はOECDが算出した2002年時点での円の購買力平価水準とほぼ合致する。1ドル=150円よりも円安水準で固定相場制を一時的に復活させる案も検討する価値がある。

デフレ解消を早期に実現するため、円高是正と同時に、日銀は現行のゼロ金利政策を堅持するだけでなく、物価に関する数値目標を導入する必要がある。当初は一定の物価水準を目標とする。物価下落が止まり目標を達成したら、例えば物価指数を前年同月比で若干のプラスにすることを目指すなど、物価上昇率の数値目標を設定する。これにより市場のデフレ脱却への期待が高まるはずだ。

ただ円高是正は(日本の輸出増が国内産業に打撃を与えるとして)欧米やアジア諸国・地域との摩擦を招く恐れもある。このため円高是正の見返りとして、世界経済の安定に日本経済が貢献できるような対外公約を打ち出すことが有用だ。具体的には、構造的な財政赤字を圧縮する中長期目標を設定。当初は輸出が増えても日本経済再生後に輸入が拡大するように、国内市場の一層の対外開放などの構造改革を推進する。

そのうえで、日本が構造改革を進めているかどうかを精査する国際看視団を与野党合意の下で受け入れる。看視団は調査結果を公表し、日本はこの結果に関する国会審議を制度化する。
こうした一連の対応を「政策パッケージ」として打ち出せば、円高是正を求める日本の立場を海外に理解してもらえる可能性が高い。(註)


(註)本提案に関する海外の反響については、英語版ホームページの「読者の声」(Readers' Voices)のコーナーをお読み下さい。